女性に多い「変形性股関節症」について
今回は、「変形性股関節症」について説明します。
図Aのように股関節は臼蓋(きゅうがい)や大腿骨頭(だいたいこっとう)で構成されます。このような関節が変形して、痛みと運動障害を招いたものが変形性股関節症です。日本人では、赤ちゃんの時に股関節が脱臼する先天性股関節脱臼や臼蓋の形成不全を経験した方に多く、その大部分が女性です。
主な症状は股関節痛ですが、動作に伴って大腿部の外側(図Bの〔1〕)や内側(〔2〕)、でん部(〔3〕)に痛みが発生します。進行すると安静時にも痛みを生じ、股関節の動きも制限されて日常生活に支障を来します。
治療では日常の注意を守ることが重要で、理学療法・薬物療法・神経ブロックなどの保存的治療が優先されます。しかし、高齢の方で症状が強い場合、あるいは症状が軽くても明らかに進行が予想される場合は手術適応です。
日常生活の注意点は股関節に負担を掛けないことです。そのためには、洋式トイレ・ベッド・椅子での生活が必須であり、歩行時に痛みを生じる場合は杖(つえ)が必要です。見た目をはばかって杖を使わない方も少なくありませんが、杖は有効な治療法の一つと捉えるべきです。
また、痛みと運動制限で肥満になりやすいため、カロリー計算に基づいた食事も必要でしょう。
理学療法(リハビリ)も股関節に負担が掛からない工夫が必要です。そのため、器具を使わないトレーニングが安全で、プール内での自力歩行が推奨されます。
薬物療法では主に消炎鎮痛薬が使用されますが、一時的に痛みを取る手段であって病気を治すための治療法ではないことを銘記すべきです。長期使用での胃腸障害や肝臓・腎臓障害などの副作用が心配ですし、鎮痛が得られた間に無理をして逆に変形が進行する危険性も否定できません。
ところで、図Bの〔1〕、〔2〕、〔3〕の痛みは、それぞれ大腿神経、閉鎖神経、坐(ざ)骨神経の関節枝が刺激されて起こります。従って、症状から痛みの原因となる神経を判断するのは容易で、その神経に直接に局所麻酔薬を注射して痛みを緩和する治療法が股関節の神経ブロックです。この神経ブロックでは消炎鎮痛薬のような副作用の心配はありませんし、心臓や脳の病気で血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)などを飲んでいる場合も安全に治療を受けることができます。
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福山光南クリニック 福山市光南町3-7-8
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※このコラムは、福山光南クリニック・橋本秀則先生
に伺っています。
(「リビングふくやま」2011年1月29日号掲載)