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※次回発行は12月27日号(ネット新聞は26日アップ)です 腰部脊柱管狭窄症の治療法について
今回は、腰部脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)の治療法について説明します。
脊柱管は図1のように脊髄(ずい)や馬尾(ばび)神経の通り道ですが、椎間板(ついかんばん)や黄色じん帯で圧迫されると、図2のような狭窄が起こります。この砂時計のようになった狭窄部位で神経が締め付けられて下肢(かし)症状を生じたものが腰部脊柱管狭窄症です。
ところで、馬尾神経のエネルギー源である酸素や栄養は、周りの脊髄液や血管から供給されます。脊髄液は脳で作られて脊柱管の中をグルグルと循環しますが(図2のA)、狭窄部位より末梢(まっしょう)はうっ滞します(図2のB)。また同時に狭窄部位では血管が圧迫されて血流が低下するため、狭窄部位より末梢の神経はエネルギー供給が低下します。そのため、歩く動作や長時間の立位などで脚の痛みやシビレが出現して、しゃがんで休むと楽になる間欠性跛行(はこう)という現象を伴います。これは、エネルギー消費が高まって、狭窄部位より末梢の神経が一過性の機能障害に陥るためです。
以上のことから、脊柱管狭窄症による下肢症状は締め付けられた神経の炎症が原因となるだけでなく、神経のエネルギー供給の低下が大きく関与することになります。従って治療では、神経の炎症を治めると同時に、エネルギーの需給バランスを改善することが重要です。
さて、治療では神経の炎症を治める目的で消炎鎮痛薬(NSAIDs)が使用されます。しかし、全身作用の一部として目的の神経に作用するため、NSAIDs単独で確実な効果は得られるとは限りません。そこで、「硬膜外ブロック」や「神経根ブロック」などを代表とする神経ブロック療法が行われます。
神経ブロック療法とは注射の原理で痛みに関係した神経を局所麻酔薬で麻酔する治療法です。ブロックの後は、知覚神経や運動神経、あるいは血管を収縮させる交感神経が麻酔されて、痛みが完全に消失して筋肉の緊張が緩み、血管が拡がって脚がポカポカするほど血流が増加します。もちろん麻酔が切れると痛みが出ますが、このブロックをきっかけに痛みは徐々に緩和します。
次にエネルギー供給の改善法として血管拡張薬が使用されます。これは、狭窄自体には手を加えずに血管を拡げて血流を増大させ、神経への十分なエネルギー供給を計るものです。いずれにしても腰部脊柱管狭窄症ではNSAIDs、神経ブロック、血管拡張薬などの複合的な治療法が必要です。
【この記事の問い合わせ】
福山光南クリニック 福山市光南町3-7-8
TEL:084(923)3724
※このコラムは、福山光南クリニック・橋本秀則先生
に伺っています。
(「リビングふくやま」2011年4月30日号掲載)
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