腰痛と姿勢について
今回は、腰痛と姿勢について説明します。
「数年来、腰痛に困っています。最近、腰が(前に)曲がっていると言われて、とても気になります」。この方は70歳の女性ですが、腰のレントゲンでは年齢相応の変形を認めるだけでした。しかし、よくお聞きすると、腰を反らす動作でときどき右脚にビリッとする痛みが走るとのこと。
図1のように、脊柱(せきちゅう)はたくさんの椎骨(ついこつ)で形成されますが、それぞれの椎骨は前方の椎間板と後方の椎間関節でつながります。また、脊柱管(せきちゅうかん)は脊髄(せきずい)の通り道ですが、その脊髄の枝は椎間孔という隙間を通ります。
このような脊柱は横から見ると特徴的なカーブを描きますが、正常な腰は後ろに反るように曲がっています(後弯=こうわん)。そのため、無理に腰を反らすと椎間関節への負担が増強して腰痛(椎間関節症)が誘発されます。
また、その姿勢では脊柱管や椎間孔が狭くなり、中の神経が圧迫されやすくなります。そのため、脊柱管狭窄(きょうさく)症(2011年3月26日号)や椎間板ヘルニア(2010年4月24日号)では、腰を反らすと脚の痛みを生じやすくなります。
ところで、すでに腰が正常とは逆に前に曲がって(前弯=ぜんわん)いるために、腰が前かがみになる場合も少なくありません。この前弯は生まれつきの場合もありますが、高齢者では腰や背中の圧迫骨折(図2)が原因となることが多いようです。特に、圧迫骨折が複数起こった場合には腰が“くの字”に曲がってしまいます。一昔前の絵本には、腰の曲がったお爺さんやお婆さんが描かれていましたが、あれは圧迫骨折が原因です。
さて、この症例では右脚の症状を伴うために腰のMRIを撮ることになりました。その結果、心配された脊柱管狭窄は軽度であったため、積極的な治療は必要ありませんでした。しかし、そのMRIからは長年の腰痛を裏付けるように椎間関節が傷んでいることが確認できました。
つまり、この症例では、歩行や立位の際に椎間関節に刺激が加わらないように、無意識のうちに前かがみの姿勢を取っていたわけです。そこで、椎間関節のブロックで腰痛の治療を行った結果、腰痛が緩和したことは言うまでもありませんが、腰が伸びたと喜んでおられました。
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※このコラムは、福山光南クリニック・橋本秀則先生
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(「リビングふくやま」2011年6月25日号掲載)