変形性腰椎症の症状と治療について
今回は、「変形性腰椎症(ようついしょう)」について説明します。
腰椎は図1のように5個の椎骨が並んだものですが、それぞれの椎骨は前方の椎間板と後方の椎間関節でつながり、穴の開いた椎骨で脊柱管(せきちゅうかん)が形成されます(図2のA)。
この脊柱管の中を脊髄(せきずい)から伸びた神経が通るわけですが、椎間板は椎体の間でクッションのように働き、椎間関節と協調して複雑な腰の動きを可能にします。これらの腰椎の構成要素は年齢とともに傷んできて、椎体が変形して棘(とげ)のような突起(骨棘=こつきょく)が形成され、関節も変形してひずみを生じます。また、椎間板の水分量が減少して本来のクッションとしての働きが損なわれ、その一部がヘルニアのように脊柱管の方へ飛び出します。さらに、脊柱管の後方にある黄色じん帯が分厚くなって脊柱管は狭くなります(図2のB)。
これら一連の変化は、60歳で60%、70歳で70%と年齢とほぼ同じ割合で認められますが、普段から腰に負担が掛かることが多い方では年齢以上の変形を伴います。しかし、変形があっても症状が出るとは限らないため、腰のレントゲンを撮ってみたら変形性腰椎症だったというケースは多いものです。
ここで、変形性腰椎症の主な症状は「歳とともに起こる慢性の腰痛」とされます。また、その腰痛は傷んだ椎間板や椎間関節に由来するとされますが、たいていは椎間関節の痛み(椎間関節症=2009年9月26日号)です。従って、「歳だから」とか「慢性だから」などとあきらめる必要はありません。
「以前から腰痛が続いています。昨日の家庭菜園が原因でしょうか、今朝から痛みが強くて身動きが取れません」─。この方は70歳の男性ですが、両脇を家人に支えられての受診となりました。腰椎のレントゲンでは年齢相応の変形が見られ、MRIでも典型的な変形性腰椎症が認められました。
早速、椎間関節のブロック療法を行ったところ、直後より自力歩行できるまでの改善が得られ、数日後の診察では、「ウソのように腰が軽くなった」と喜んでおられました。
ところで、変形性腰椎症では、脊柱管を通る神経が刺激されると脚の痛みやシビレなどの下肢(かし)症状が出現します。しかし、ヘルニアが原因であれば「椎間板ヘルニア」(2010年7月24日号)、脊柱管が狭くなった場合には「脊柱管狭窄症(きょうさくしょう)」(2011年3月26日号)と呼ばれる習わしです。
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※このコラムは、福山光南クリニック・橋本秀則先生
に伺っています。
(「リビングふくやま」2011年10月22日号掲載)