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※次回発行は12月27日号(ネット新聞は26日アップ)です 慢性痛のメカニズムと治療について
今回は、「慢性痛」について説明します。
ところで、痛みは急性痛と慢性痛、がんの痛みに分けられます。ここで、急性痛と慢性痛の違いは単に痛みの持続時間の差だけでなく、急性痛がなんらかの病気に伴う症状(純粋な痛み)であるのに対して、慢性痛はそれ自体が病気であることです。
この慢性痛に苦しむ方は成人の10%を超えるため、労働力の低下と医療費の増大により膨大な経済損失を招きます。そのため、世界的規模で慢性痛の研究が行われ、現在では、次々に新しい知見が報告されています。
さて、痛みを感知する末梢神経(主に知覚神経)は身体の至る所に存在して、身体にとって有害な刺激を中枢に伝えます。例えば指先を負傷した場合、その刺激は図1のように末梢(まっしょう)神経〔1〕→脊髄(せきずい)の神経〔2〕→脳と伝わり、有害と判断されて痛みを生じます。このような痛みが急性痛ですが、結果として患部の安静が保たれて治癒が促進されます。また、患部が治るころには傷みは消失するため、急性痛は身体に有益な警告として働きます。
一方、有害な刺激が予想以上に続く場合、痛みも持続するため慢性痛と呼ばれます。これが一般的な慢性痛ですが、慢性の腰痛(2009年8月25日号)やリウマチの関節痛などがその代表です。しかし、医学的な慢性痛は、後述のような神経の過敏化と損傷が原因で痛みが持続する病態を指します。
まず、急性痛が持続すると、刺激の種類と程度によっては神経〔1〕、〔2〕が過敏になり、無害な刺激でも痛みが持続します(図2)。例えば、帯状疱疹(ほうしん)後神経痛(2009年4月25日号)では、患部に着衣が触れただけでも激しい痛みを生じます。また、強い炎症や外傷などで神経の一部が損傷を受けると、その損傷部位から勝手に刺激が発生して、末梢からの刺激が無くても痛みが持続します(図3)。この神経損傷による慢性痛は脳の傷害でも起こりますが、脳卒中で麻痺(まひ)した手足に強い痛みを伴うことも少なくありません。
従って、慢性痛は早期に積極的な治療が必要です。しかし、消炎鎮痛薬(痛み止め)は急性痛の治療目的で開発されているため、神経過敏や神経損傷による慢性痛では効果は期待できません。また、多くの慢性痛の治療で活躍する神経ブロック療法も神経損傷が主体の慢性痛には無効とされます。そのため、慢性痛では各種の薬物療法を主体とした包括的治療法が推奨されています。
【この記事の問い合わせ】
福山光南クリニック 福山市光南町3-7-8
TEL:084(923)3724
※このコラムは、福山光南クリニック・橋本秀則先生
に伺っています。
(「リビングふくやま」2011年12月24日号掲載)
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